目に余る少年の反則

 私が指揮を執った小学4年生の試合。ゴールに向かって独走状態だった我がチームのエースが、ペナルティエリア直前、相手DFに後方から激しく押されて胸、肩からもんどりうって転倒。0-0の緊迫した場面で先制点となるはずのプレーを阻止されました。
 倒された子は運動能力の高い子だつたので、幸い、倒れながらもかろうじて身を翻し、顔面、頭の強打は避けることができました。それにしても悪質極まりない反則です。懸命に競り合って体を投げだしてタックルした末に足が引っかかった...という不可抗力の類のプレーではなく、明らかに後方から倒す意図を持って行った大変危険な行為です。
 子供とはいえ、レッドカードは当然。大人なら悪質な危険行為で出場停止を何試合にするか規律委員会で審議されるような反則。しかしレフェリーは何事もなかったかのようにただのFKを与えます。イエローすらもなし。
 こうした、確信犯の汚い反則行為に対して、毅然と対処することができない大人が非常に多い。子供だからイエーローやレッドは可愛そう...と思っているのか、それとも、カードを出すように重大な意思決定は私にはとてもできませんというチキン丸出しなのか?
 自著でも紹介させていただいてますが、過去にも後方から激しく押し倒すという危険行為を受け、打撲・昏倒のダメージの深さに子供がプレー続行不可能になったことがありましたが、そのプレーでも相手には何の処分もなく、ただのFKで終わりでした。
 振り返ってみれば、つい先日まで参加していた大会で対戦した「強豪」とされるチームのボール奪取における接触プレーのほとんどが反則行為でした。手を出す、肘を出す、ひっぱる、背中から押す...。我がチームの子どもたちが体格差にもひるまず、懸命にボールをキープしても、後ろからなぎ倒されるようなプレーで簡単に奪い返されていました。
 未熟でチキンな審判がカードを提示しないことを子どもたちは知っています。「やってしまった者勝ち」ということをあざとく見越して汚い行為をします。しかし、そうして正当ではない形で、審判の未熟さにつけこんでボールを奪うようなことを繰り返していって、正しい競り合いを身につけられるのでしょうか? やがて、それまでやってきた方法が全部反則をとられるようになった時、まっとうな方法で守れない自分に気付いて悔やむことでしょう。
 過去の例でもそうですが、こうした汚い反則を敢えて子供にさせるチームは、事前に指導者が子どもたちに強く勝利を義務づけていることがほとんどです。今回の対戦相手も、前の試合で負けたために、「次は絶対に負けられないんだぞ」と待機の時間の30分以上ずっと監督が激しい口調でミーティングしていました。
 その結果、よほと「負けられない」という洗脳が子供にいきわたったのでしょう、このままでは確実に失点という場面で、あれほどあからさまな反則で止めるということは...。
 これは邪推かもしれませんが、悪質な反則にカードを提示しなかった主審が前回大会で我がチームと決勝トーナメント進出を争ったチームの監督であったことも気にかかります。我がチームが負けると、彼らにとっては非常に都合がいいのですから。なぜこんな邪推をするかというと、そのチームの関係者には過去にも同様の「恣意的判定」をされて我がチームが勝ち点を失い、そのチームに利するような結果を導かれたことがあるからです。
いずれにせよ、後方から激しく押し倒して失点を防いだ相手チームの子は、試合後どんな心境だったのでしょう?心の隅に良心の呵責のようなものを持ってくれたなら、同じスポーツツの仲間として少しは救われます。