石頭

 神奈川県社会人リーグの試合。確保したグラウンドは15:00~17:00の利用時間枠。90分ゲームでハーフタイム、ロスタイムを考えると、試合前のウォーミングアップがピッチ内で十分にできません。ですので通常、選手たちはやむなく、グラウンド脇のコンクリート道路などでアップします。
 その日、グラウンドを確保してくれた相手チームの人が、気を利かして17:00~18:00のまでの枠を追加確保してくれました(もちろろん追加料金が発生します)。そのことで、全体の利用時間枠を広げ、キックオフを少し遅らせることで、試合前のアップをピッチ内で十分にしましょう、という提案でした。これで普通にピッチ内でボールを蹴りながらアップができることになったと、両チームの選手、関係者とも大喜び。では、キックオフ時間を15分くらい後ろにズラせて開始しましょう、と合意しました。
 この合意事項を先に到着した副審に告げると、「私はいいですが主審に確認を取って」とのこと。そこで後から到着した主審に告げると「認めません」。「ええっ。両チームとも合意し、副審もいいと言っているのですよ」と私たち。「正当な理由がありません」と主審。
 「選手が危険な形でアップしなくてすむこと、試合と同じ環境でボールを使って十分にアップできるようになること、それが正当な理由にはならないですか」と私たち。「いや、ダメです」と主審」。「審判委員会に報告されているキックオフ時間を変更する理由にはなりません」。主審一人が頑なに言い張り、グラウンドに集うその他全ての人、およそ30人が唖然。
 こういう類の審判。よくいます。子どもの試合で爪の長さにしつこくこだわって深爪にになるほど何度も切らせる人、アンダーシャツが襟や袖口からでていると5mm、1cmにこだわって脱がせる人、給水は水だけしか認めないと「麦茶」と書かれたペットボトルを使わせない人(公立学校の土のグラウンドで)、給水ジャグは凶器になるからと使わせない人、GKどうしのユニフォームの色が似ているからと着替えを指示する人(GKどうしがクロスプレーになることなど滅多になどないよ)...。
 皆さん、よくご存じだと思いますが、こうしたつまらないことに権威を見せつけたがる審判に限って判定は未熟ですよね。そう、試合時間の変更に応じなかったその石頭君の判定は...言うまでもありません。たった15分のことに臨機応変な判断ができない人に、17条しかないサッカーのルールを状況に応じて適応できる能力があるわけない。対戦するチームどうし、とくに荒いプレーをするわけでなく、マナーが悪いいわけでなく、普通に落ちついて裁けば何事もなく終わる試合でしたが、その石頭君の基準が一定しないあいまい判定のお陰でイエロー4枚。互いに不必要にトゲトゲした雰囲気で試合を終えることになりました。
 試合は裁いてくれる審判がいなければ成り立ちません。審判も人間ですから、完璧ではありません。判定に不満があることもサッカーのうち。だから、審判の立場もリスペクトしましょうと、私たちは言っています。そもそもルールの基本は、選手に危険なことをさせないこと、フェアを貫徹すること、マナーを守ること。審判にはその原点に立ち帰って考えてほしいものです。両チームが互いに危険になく、不振なく、気持ちよく試合できれば、いいのです。
 ところが、そうしたルールの原点から離れて、試合の成立や進行にあまりかかわりないことで細々と「権威」を振りかざされると、試合前に「この人は本質に関係ないことにうるさくこだわる、つまらない 人間だ」という不信感を持つことになります。そうなると、試合中にミスジャッジがあった場合でも、選手は「しょうがない」と納得せずに、「試合前につまらんことをうるさく言うくせに、こんな簡単な判断を誤るのか」とカリカリしてしまいます。
 勝った側からも、負けた側からも、「今日の審判ひどかったね」と言われる審判の場合は決まって、試合前にはうんざりするほど口うるさく、試合中は誤審だらけ、というバターンです。