困ったものだ-2

 某県営グラウンド。試合の準備でラインを引いていると、グラウンドに侵入した親子がゴールエリアのところで野球をしています。「オレたちがお金を出して借りているんだから出て行って」などと無粋なことはいわずに、隅で野球遊びをするくらいいいかと、と思っていました。
 なぜなら、しかるべき状況になれば、父親がきちんとわきまえた行動を取ってくれると期待したからです。グラウンドでは大人の選手がウォーミングアップを開始していますし、私はサッカー仕様のラインを引いている。親子が遊んでいるあたりのラインは最後の仕上げに残している状況。いつが遊びの「引き時」かは、常識ある大人なら察知できるはずだと思ったのです。
 私がラインを引きながら進むと、「ああ、ラインがあれば分かりやすくなるよ」と父親。つまり、ホーム、一塁、二塁、と野球のダイヤモンドが明瞭になるとのこと。「そうだね」と子ども。そして、私が引いたばかりのゴールエリアとゴールラインの接点をホームベースに、平然と野球を続けます。書いたばかりのラインはみるみる踏み消されていきます。
 見かねた私が「ねぇボク、そんなことしたら今オジさんが引いたラインが消えちゃうよ」というと、子どもは消えた足元のラインを見てポカンとした表情。何でダメなのとでも言いたげな顔。しょうがないので父親に言いました。「お父さん、お父さん、ここは有料専用使用の施設なのですよ。今、サッカーの試合の準備をしています」。
 父親は「すみません」でもなく、時計を見て「ああ」と一言。正式な使用時間にまだ少しあるのでは、とでもいいたげな表情。私が引いたそばからラインを踏み消したことなど、まったく意に介せず、不満げ。子どもが小さな声で「ねえ、パパ、ユウリョウシヨウって何」。父親はそれに応えず「じゃ、あっちに行こう」
 やれやれ。子どもは皆、無垢で生まれてくるのに。こうして環境によって育ち方が違っていくのですね。あんな父親の元に生まれた子供がかわいそう。世のパパたち、気をつけて下さいね。