ペケルマン監督

 正式発表は現時点(30日10:30)ではまだですが、日本代表代表の新監督にペケルマン氏が決まったようです。ペケルマン氏はアルゼンチンでユース年代の指導実績を積み、同国代表監督としても06年W杯で采配を振るっています。
 私は次期監督がアルゼンチン人指導者ということで、多少、ほっとしています。アルゼンチンのサッカーには日本のサッカーに欠けているものが多くあるからです。1対1への厳しい姿勢、丁寧なパスワークを重視しながらもゴールに直線的に向かう意志も忘れないアグレッシブな攻撃。同じ南米のライバル、ブラジルよりもよりスピーディーな展開。
 今、猫も杓子もスペイン、という状況ですが、圧倒的なパス成功数とポゼッション率を示しながら、歴代W杯優勝チームとして最低の得点しか挙げていないスペインのサッカーを盲目的に崇拝することは危険だと思っていました。バスはつながるがゴールが奪えない、という病気に日本のサッカー界はかかり続けているのですから。
 南アフリカ大会でのアルセンチンは、マラドーナ哲学のもと、完全に頭でっかちの超ミラクル攻撃チームでしたので、チームとして攻守のバランスを欠きました。しかし、あれは本来のアルゼンチンではなく、「アルゼンチンの攻撃」ばかりを押し出したチームでした。ペケルマンのチームづくりはもっと堅実です。
 私がペケルマン指導に期待することは、一つは守備から攻撃に移った時の、特に速攻に関するプレーの成熟です。もう一つは、遅攻でポゼツションしながら好機をうかがう中で、どのようにして勝負のプレーのタイミングを伺いスピードアップしていくか、という部分の成熟です。この二点についてはアルゼンチンの選手は本当に鋭い。ぜひ、その真髄を伝授してほしいものです。
 ただ、ペケルマンは過去のインタビューなどで、アルゼンチンのサッカーは特に国としても方向性を決めて統一した指導をしているわけではないと語っています。各クラブで育った選手を統合すると自然にアルゼンチンのサッカーになっているのだ、と。そうであれば、日本のサッカー環境で育った選手たちを見てペケルマンは何を思うのか、少し心配でもあります。
 ともあれ、日本のサッカー界は、ペケルマン氏のように、元名選手ではないけれどよく勉強して理論的バックグラウンドが豊富な「先生タイプ」の指導者が大好きですね(笑)。そのタイプでいえうばオフト、トルシエオシムの路線でしょうか(オシムは少しだけ名選手でしたが)。これから先しばらくは、また誰か御用ライターがくっついて「ペケルマン先生がこのように語られました」「ペケルマン先生の言うことを実践しよう」という類のサッカー記事が溢れるのでしょうね。