ハリルホジッチ監督の不安

 日本代表の監督にハリルホジッチ氏が就任することになったようです。
 スパレッティ氏など高名な候補もいたようですが、高名、名監督であるほど、今さら日本代表の監督を引き受けるメリットはないですからね(笑)。今フリーで、日本代表で失敗しても大きなキズがつかない監督となれば、かなり限定されてしまいます。JFAとしては、あまり選択の余地はなかったのでしょう。
 さて、ハリルホジッチ氏は旧ユーゴ出身でオシム氏と旧知の仲ということが日本では好意的に受け取られているようです。しかし私は、オシム氏の時もそうでしたが「勝ち切れない旧ユーゴ」の悪しき伝統を引き継ぐのではないかと心配しています。
 旧ユーゴは東欧のブラジルと呼ばれるほどテクニックの巧みな好チームでした。主要国際大会に出場するたびに素晴らしいサッカーを展開して活躍し、強豪国を苦しめますが、なぜかいつも「あと一歩」というところで敗退しています。しかもリードしていて逆転負けとか、同点に追いつかれて延長やPKで負けるとか、勝負弱さが目立ちました。オシム氏の時もアジア杯で10人の韓国に競り負けていますよね。
 旧ユーゴは名指導者の宝庫でもあります。旧ユーゴ出身で弱小チームをぐんぐん強化した、という指導者はたくさんいます。かつてアメリカ、中米、中国で旋風を巻き起こしたミルチノビッチ氏も旧ユーゴ出身です。彼らの特徴は、戦術、戦略に長けていることです。発展途上のチームに「戦い方」を植え付けて成長させることが得意です。ハリルホジッチ氏がブラジルW杯でアルジェリアを躍進させたのも、そうした指導からだったのでしょう。
 ただし、アルジェリアはドイツを追い詰めましたが、結局、退けられました。「あと一歩」が足りませんでした。戦術意識を高めてハードワークして食い下がる、という戦法は確かに「健闘」はしますが「あと一歩」の克服はできません。日本はすでに「あと一歩」が足りないという経験は何度か繰り返しています。今さら再びハードワークで食い下がるという「健闘」止まりのサッカーでいいのでしょうかね?
 もう一つ心配なことは、アルジェリアのように堅守速攻を徹底されたらどうするのか、ということ。私は現時点での日本のレベルを考えれば、その戦法で戦うことにまったく異論はありません。しかし、日本では守備的な姿勢を前提にする戦い方を毛嫌いするファンが多数います。曰く「守備的では未来に何も残らない」と。どうなるんでしょうねサッカー世論は...。
 ブラジルW杯を目指したザッケローニのチームは「攻撃的」を旨としていのですから、堅守速攻じゃダメだと言っている人たちにとっては、あの一分け二敗という結果は「とても未来がある」内容だったのでしょうねきっと(笑)。そういう人たちの堅守速攻否定論をハリルホジッチ氏はどのように説き伏せていくのか楽しみです。