チリの限界と日本の方法

 グルーブリーグで統制のとれたプレーを披露し、評価が高かったチリが決勝トーナメント1回戦でブラジルに0-3で敗れました。優勝候補最右翼のサッカー大国を相手に、臆することなく果敢に攻めて出たチリの姿勢は勇敢でした。しかし、南米予選でも同じようにブラジルに挑んで0-3、2-4と敗れていたのですから、ビエルサ監督が三度、同じ戦い方を繰り返したこと関しては評価がわかれるでしょう。

 もしチリがブラジルと堂々と攻め合うことなく、日本がカメルーンやオランダにしたように守備的な試合運びをしたとしたら、どうだったでしょう。あのブラジルの破壊力ですから、それでも結果は同じだったかったかもしれませんが、攻めに出たことが裏目に出て失った2点目、3点目に関しては違った展開も期待できたかもしれません。ビエルサ監督は強気の攻撃サッカーで知られる人ですから、敢えてその選択をせず、ブラジルに対して三度、攻め合う方法を選んで華々しく散ったわけです。

 自分たちの信じるスタイルを堂々と貫いて散ったチリには潔さを感じます。しかし、もしチリが日本だったとしたら、ブラジルに真正面から挑んで散ったチームに日本のファンはどのような評価を下したでしょう。今の日本代表は、大会前まで「日本らしい」と信じていた、前線からプレスをかけ、ショートパスを交わして攻める方法を徹底していました。相手がどこであれ、それを貫くというのが岡田監督の方針でした。しかし、大会直前から軌道修正し、堅く守って素速いカウンターを繰り出す方法で結果を出しています。相手の戦力に合わせて戦い方を変える、という方法論に方向変換したのです。今、日本のサッカーファンは、その柔軟な方法論を高く評価しています。

 なぜ「 チリが日本だったら---」と書いたかというと、ビエルサ監督が岡田監督の後任候補の一人に上がっているからです。もしビエルサが次期日本代表監督になれば、チームづくりと戦い方は、チリで行ったものと同じになるわけです。今回、日本代表は「相手に合わせて賢く戦い方を変えていく」という方法論で結果をだしました。ビエルサはその方法論を継承するのでしょうか。それとも、チリにしたように、相手がどこであれ、二度でも三度でも、果敢に正面から挑んでいくスタイルを徹底するのでしょうか。そのビエルサ的方法論を導入された場合、日本人選手はそれで結果を残せるのでしょうか?