グルーブリーグ最終日

 ブラジルvsボルトガルは期待はずれの内容でした。ともに高度なテクニックを持つ国同士の試合でしたが、披露されたのはタイトな守備ばかり。ともに無理に勝つ必要がない試合を攻め合って進めてくれたことはよかったですが、とても「面白かった」とは言えない展開でした。C・ロナウドも「オレが何とかする」という意識が強すぎて、強引すぎる個人突破が気になりました。

 スペインに猛然と挑んだチリの組織力と走力と闘争心は見事でした。さすがにビエルサ監督、招集時間の限られた代表チームをよくここまで鍛えたものです。チリのプレーには、優勝候補を倒してやろうという野心に充ち満ちていました。俗に「個人技の南米」などといいますが、チリはドイツやオランダを想起させる組織力のチームです。残念ながら神経質な主審のジャッジで退場者を出してしまい、長い時間を10人で闘うことになり1-2の惜敗を喫しましたが、組織的な頑張りぶりは日本代表より迫力がありました。

 それにしても、チリに押し込まれてなかなか自分たちのサッカーができなかったスペインが、一瞬のスキを活かして挙げた得点も見事と言う他ありませんでした。特に1点目、ミスを拾ってカウンターからF・トーレスが抜け出しましたが、チリGKが判断良くペナルティの外まで飛び出してスライディングでクリア、ボールはハーフウェイラインから10mくらい進んだところに転がりましたが、それをビジャがダイレクトで無人のゴールにシュート、約40m強を正確に飛んだボールはゴールに転がり込みました。キックの精度には舌を巻きます。

 今回のW杯グルーブリーグで目立ったことは、組織的な機能の徹底がなされているチームが堅実に結果を出しているということです。個々の能力が第一線級でなくても、戦い方が周知徹底されている国は健闘しました。日本を筆頭にパラグァイ、チリ、メキシコ、アメリカ、スロベニア、スイスなど。逆に、フランス、イタリア、ナイジェリア、コードジボアール、カメルーンセルビアなど、能力の高い選手が揃っていても、戦略、戦術という部分で練られていない国は勝ち進めていません。

 日本は組織力で勝ち進んだので、今後、日本のサッカー界ではより一層、組織力が強調されるかもしれません。それは日本人が世界に挑むための大切な方法論かもしれませんが、忘れてはいけないことがあります。組織力を徹底できる選手とは、それ以前に、個人としても相応の能力を持っているということです。本田選手も組織の役割を遂行するためにDFを背負ってターゲット役を続けましたが、デンマーク戦の3点目の場面のように、必要な場面ではTPOに応じたテクニックを発揮してDFをかわしていました。「組織しかできない」のではなく、「組織もできる」という選手が必要なのです。