記者の質も問え!

 大坂なおみ選手が記者会見の欠席を表明すると、組織はすぐに重い罰金処置を下しました。ヒアリングもなく説得もなく、いきなり重い罰金が言い渡された経緯を見て、もしこれがシャラポアだったら、ヒンギスだったら、グラフだったら、あるいはエバートやナブラチロアだったら同じだったか?と疑問に思うのは少し考え過ぎでしょうか?

 今あげた選手たちはみな、いわゆる白人です。組織が大坂選手に「即断」に近い形で重い処罰を課したのは、彼女が「Black Lives Matter」などに関して積極的に発信している有色人種であったことと無関係なのだろうかと疑うのは考え過ぎでしょうか? 考えすぎであることを祈ります。

 さて、メディアとの共存はプロアスリートの宿命です。会見への出席は仕事の一部です。一方、記者も報じることが仕事です。会見で選手の話が聞けなければ仕事になりません。なので、いわば「お互い様」なのですから、互いが互いの仕事に敬意を持って接したいものです。

f:id:johan14:20210604165523j:plain

 ところが、聞く側に問題が多いことも事実です。自分もかつて取材者としてミックスゾーンや記者会見場で選手に質問をしていたので、そこでの様子はよく知っています。とりあえず自分のことは棚に上げて言わせていただくと「くだらないこと聞くなよ」と言いたくなる質問はかなりあります。むしろそういう類の質問の方が多いという印象があります。

 先日、女性蔑視発言で物議を醸した森喜朗氏が「どうせ面白おかしく書きたいんだろう」と開き直ってさらに叩かれましたが、確かに森氏がそう感じるような接し方をするメディア関係者がスポーツ報道界にもいることは確かです。面白おかしく書けるネタを引き出せば、翌日の「見出し」に使えるわけですから。

 かつて25~6歳の若いアスリートが実にくだらない失礼な質問に対して誠実に対応している場面を間近で見て、心から「偉いなぁ」と感じたことがあります。自分があの年齢だったらきっと怒り出してしまい、とてもあのように冷静に対応すことはできないだろうな、と思ったものです。

 「自分の記事さえ注目されればいい」という、スポーツの発展やスポーツの理解に何も役立たないようなくだらない質問がアスリートの心に不要なトゲを刺している現状があります。会見の欠席に何百万円もの罰金を貸すのであれば、その会見で質問する記者のレベルも一定以上に揃えていただきたいし、場違いな質問をしたり的外れな質問をした記者に何がしかの罰則を課すような制度を設けなければフェアではないと思います。 

 まぁどうせ報道の自由とか表現の自由とか、言われるんでしょうけど(笑)。