「決めておく」ことの意味

 日本代表、ヨルダンに圧勝しました。過去、苦戦していた相手だけに、意外な結果と思われた人も多いでしょう。

 しかし、もともと日本とヨルダン、あるいはオマーンなどの国との間には、それ相応の力量差があるのです。だって考えても見て下さい。国土や人口、GNPといった基本的な国力の差、そして、国内プロリーグの有無とその規模やレベルの差、スポンサーや放送局から受け取る契莫大な契約金を軸にしたサッカー協会の予算の規模、代表チームに投入できる金額、人員、使える施設、トレーニングセンターなどの育成システムの有無..などなど。チームの背景にある種々の条件には雲泥の開きがあるのです。言い換えると、日本は勝たねばおかしいのです。
 ではなぜ、これまで苦戦してきたのでしょう。それは、簡単です。決めるべきチャンスに決められなかったからです。
 決定的なチャンスを逃す。こちらは焦る。相手は「いけそう」と思う。焦れば焦るほど、工夫や変化の乏しい単純な攻撃をしがちになる。すると、守る方は抑えるべきポイントが見えて耐えやすくなる。同時に、前かがりになった隙を突いてカウンターが繰り出しやすくなる....。勝って当然、という相手に苦戦するときは、大抵、このバターンです。
 今回の2連戦は、早い時間帯に決定機をきちんとものにしました。それで、相手から「うまくやれば、いけそう」という気持ちが一気に削がれました。「取らなければ」と焦って決定機のミスを繰り返す状況と違い、すんなりと先制点が取れてしまえば、攻撃陣の肩の力も抜けてきます。
 相手はじっくり守ってカウンターを仕掛けるプランを修正し、なんとか追いつくために能動的に攻撃しなければならなくなります。堅い守りが解けて、隙ができるのです。肩の力が抜けてのびのびしている攻撃陣にとって、これほど攻略しやすい状況はありません。 
 何でもそうですが、潮時、適時、というものがあるのですね。それを着実につかむことが大切なのです。この力が研ぎ澄まされれば、W杯本大会に行ってもベスト8は達成できます。