日本人の美徳と石原都知事の暴言

 震災後の混乱が続いています。しかし、未曾有の災難の渦中にあるにもかかわらず、努力して秩序を保とうとする日本人の公共心の強さには感心します。海外のメディアもその点については最大級の称賛を送ってくれています。
 地震当日、私はチームの練習場所に出向いて活動中止を告知し、その後、交通がストップしたために孤立してしまった娘をピックアップするために車を走らせました。停電のために真っ暗なニュータウンの町並み。機能していない信号機。しかし、そんな治安悪化が心配される混乱の中でも誰一人、商店を略奪しようとする者はおらず、大きな交差点でも車が譲り合って進んでいました。
 家にたどり着くまで都合6時間にも及ぶ運転になってしまいましたが、その間、一つもトラブルに遭遇することなく、皆が我慢強く苦境に耐えている様子を見て、日本人は何と素晴らしい意識を持っているのだろうと感激しました。W杯に行って交通機関の遅れなどに遭遇したとき、我先で人を平気で押しのけ、自分が乗り込んでしまえば後続の者を「もうダメ」とばかりにシャットアウトする外国人に唖然とする経験を多くしているので、我が国の公徳心の高さには誇りを感じます。
 電車の運転が再開したものの、乗り込むまで1時間、2時間を並ばされた会社員が「東北地方のことを思えば1,2時間並ぶくらい我慢しなけりゃだめでしょ」とインタビューに応えていました。いい心意気に拍手です。
 そんな中、石原都知事は「震災は日本人の我欲に対する天罰だ」と被災者にムチ打つような暴言を発しました。記者に正されても訂正する意志もないとのこと。怒りがこみ上げます。
 1万にも達しようとしている犠牲者、家族を亡くされて途方に暮れている方々、跡形もなく家を押し流され帰る場所のない人々。濁流の犠牲になった中には乳飲み子も幼児もお年寄りも病人も含まれます。子どもを宿した身重の女性もいます。そうした方々が皆「我欲」にまみれた天罰で命を落としたというのでしょうか。無神経を通り越した厚顔無恥の言動には政治家というより人としての品格の下劣さを感じます。