3位決定戦、決勝

 3位決定戦、ドイツも見事でしたがウルグァイの奮闘も印象的でした。大会前は決して評価が高いチームではありませんでしたが、自分たちの戦力に見合った戦い方を貫きました。その意味では日本代表に通じるものがあったと思います。大会MVPになったフォルランのシュート力はキックの精度、決断力とも言うことなし。難しい軌跡のクロスをボレーで叩き込んだ得点は、私のW杯スーパーゴールランキングでもベスト5に入ります。3位決定戦のためか、双方、リスクを恐れず攻め合い、試合そのものは決勝よりもずっと面白かったですね。

 フォルランスアレス、そしてドイツのミュラーやクローゼ(3位決定戦では欠場)に共通するのは、どんな些細なチャンスでも隙あらば得点に結びつけようとする姿勢。形とか手順などではなく、感覚的に「ここだ」というポイントを嗅ぎ分けることができる。教わって身につけるものではない。生来のセンス。今の日本のサッカーに最も欠けているものですね。どうしたら育つのでしょう。サッカーを「コーチから教わるもの」ととらえているうちはダメでしょうね。

 決勝はつまらない試合でした。「つなぎ」にこだわりすぎるスペインと、勝負にこだわってファウルの多いオランダ。結局、オランダはファウルでセンターバックが退場し、そのセンターバックにカバーで入った選手のクリアミスを拾われてイニエスタにつながれ、決勝点を奪われました。数え切れないパスをつなぎ、決定的な中央からの突破を二度(イニエスタ、セスク)逃したスペインは、皮肉なことに自慢のつなぎからではなく、フェルナンド・トーレスの「適当な」クロスをオランダがクリアミスしたボールを拾ったことが優勝につながりました。

 華麗なサッカー、良いサッカーが勝って素晴らしいという評が多いですが、大会史上、最小得点しか挙げずに(緒戦から決勝までの全7試合で8得点)優勝したという事実は、いくらバス本数が多かったといっても考える必要があると思います。優勝しても守備偏重のサッカーがつまらなかったと酷評された94年大会のブラジルでさえ11点を挙げています(これまでの優勝チームの最小得点でした)。バスがつながること、得点を多く取ること、そして勝つこと。これらの要素をどのようにとらえていくのか、考えさせられました。

 日本代表のサッカーについても同じことが言えます。ウルグァイ同様、自分たちのできること、できないこと、をきちんとわきまえて、守備主体の戦い方をしたことでベスト16に躍進しました。結果については評価する声が多いと思います。しかし、間もなく「結果は出たがあんなサッカーでいいのか」という訳知り顔の批評が飛び交うことでしょう。「守備偏重では後ろ向きだ」とか、「そんな試合を観たくない」とか、「未来につながらない戦い方だ」とか。果ては「あのスペインを目指せ」など。

 確か12年前、98年フランス大会に出場権を獲得した後も、「本大会は岡田の指揮ではダメだ」という評論が一部メディアで飛び交った時がありました。また今回も「あの岡田のサッカーではダメだ」と言われるのですかね、岡田さん。あれから12年、ファンの目も肥えて、サッカーを批評するための見知も深まったはずです。今回の日本代表の戦法に対して、どのような議論が交わされるのか、日本のサッカーファンの成熟度が試されます。