オランダvsウルグァイ

 オランダvsウルグァイは74年西ドイツ(当時)大会の思い出が強烈です。トータルフットボールと呼ばれた当時の最先端のサッカーをひっさげて登場したオランダが、グルーブリーグ初戦で対戦したのがウルグァイでした。オランダがダークホースという下馬評はありましたが、古豪ウルグァイの前にそれが通用するのか否かが注目されました。

 試合がはじまると、私たちは度肝を抜かれました。ウルグァイの直線的な攻撃がことごとくオランダのオフサイドトラップにかかってしまうのです。驚いたのはウルグァイがオフサイドトラップにかかった数の多さだけではありませんでした。その場所がハーフェイラインを超えてすぐの地点ばかりだったのです。今では当たり前になっている「最終ラインを押し上げ、高い位置で意図的にオフサイドにかける」という戦術を繰り返す大胆なオランダの手法は驚きでした。

 それでも何度かラインの押し上げのタイミングが狂い、ウルグァイのFWがオランダのDFラインの背後に抜け出しました。「オランダのピンチ」と思われた瞬間、DFラインの後ろに転がったボールをクリアしたのはGKでした。GKがここまで出てくるのか!?ペナルティエリアを大きく抜け出してGKがクリアするという、今では当たり前のシーンも、当時は驚きだったのです。

 こうして、ウルグァイはオランダの斬新な戦術の前になす術なく0-2で敗退します。オランダ強しの評判が瞬く間に世界を駆けめぐりました。世界のサッカーが新しい形に進化をはじめた、まさにきっかけとなった試合が74年のオランダvsウルグァイという見方もできると思います。

 あれから36年。オランダはその後、世界のサッカーをリードする立場になり、今大会でも理にかなった最新鋭のサッカーを展開します。ウルグァイはしばらく低迷しましたが、伝統の堅守速攻に磨きをかけて、近代サッカーに適応するチームをつくりあげてきました。36年を経て再び繰り返される最先端と伝統の闘い。楽しみです。