PKボール水かけ問題

 JI町田の藤尾選手による「水かけ」問題。いろいろな意見が飛び交っているようです。PKキッカーとなった藤尾選手が蹴る前に給水ボトルからボールに水を大量にふりかけた行為。審判が制止してボールを交換して蹴らせました。

 まず「ルールには"ボールに水をかけてはいけない"と書いていないではないか」という議論。笑っちゃいます。こんなこと論議していたら「~してはいけない」という項目をあれこれ全て列記するだけで百科事典ができてしまう(笑)。

 ボトルの水は「飲むため」のものでありボールにかけるために使うべきではない、という議論も。これも「~は~のために使うもの」という百科事典ができてしまう。そういえば昔、ボールに座っていたら「ボールは椅子じゃない」と怒った指導者がいたものです(笑)。

 マナーとしてどうなんだという意見。それならスローインのときにボールがすべらないようにユニフォームシャツをたくし上げてボールの表面を拭く行為も同様に議論しなければなりません。

「選手がゲン担ぎや"おまじない"的なことでいろいろな仕草をすることはよくある。あれもその一つ」「GKだって気合を入れるためにグローブにつばをつけたりするだはないか」---まぁそうなんですけど、いずれもやった本人だけで完結していて、プレーそのものには何の影響もないことです。

 PKとなると話が違います。PKで蹴られるはボールはGKがキャッチしたり弾いたりする可能性があります。つまり、相手のプレーがかかわってくるのです。一方の選手のゲン担ぎやおまじないとは別次元の視点が必要です。

 私の意見は「あれは明らかにNG」です。

 それは今、書いたように、ボールに水をかけることがプレーそのものに影響するからです。水浸しになったボールは乾いたボールに比べて滑りやすくなる。芝面を転がるとき、あるいはGKにキャッチされた時に、濡れていないときとは異なる状況が起き得るわけです。そいう状態をキッカー自ら意図的につくることはフェアではありません。

 問題は、雨の試合だったらどうなるのか、ということです。もともとボールが濡れているからです。水をかけても結果としてボール表面の「摩擦度」は変わらないではないか、という話になります。

 また、雨は降っていないけど芝面が濡れているときはどうなのか? 晴れでも芝に水が撒かれて表面が湿っているときそはどうか? ---などと重箱の隅をつつくような議論がまきおこるでしょう。土のグラウンドや芝でもピッチが荒れた場合、もしかしたら、ボールにこびりついた泥を水で洗い流したほうがGKにとってもボールを認識しやすい状況をつくる場合があるかもしれません。

 なので、全ては状況に応じた主審の判断になるでしょう。それをすることで両者が「フェア」に競うという状況が保てるのかどうか、ということに尽きると思います。

 でもまぁプロなのですから、そんな突飛な行為に頼らずに、泰然自若として得意のコースにズバリと決めてほしいものですよね。キッカーが絶対有利なPKなのに、そんな"おまじない"をしなけりゃ決める自身がない程度の度胸なのかよ、と思ってしまうわけです。