そもそも必要なこと?

 自動車各社が検査で不正をしていたとのことで各社トップが謝罪する様子がニュースで流れました。すべきことと定められていることをしなかったのですから、それは悪いのでしょう。

 しかし何だか腑に落ちないのは、本来、世に出回ってはいけない状態の自動車が実際には多数、販売されていて、市中を堂々と走っているということ。そして交通事故の原因がその不正にあった、とされているものがほとんどないことです。

 それは「たまたま」なのだ、放っておけばいずれ取り返しのつかない事が起きたかもしれないのだ…というのが取り締まる側の言い分でしょう。でも、不正は長年、慣習的に行われていたようで、それでも各社の車はずっと普通に走っていて、交通事故の犠牲者は年々、減少しています。

 専門的なことにはまったく門外漢ですが、そもそも現場メカニックの人が「これはスルーしたら危ない」と思っているものを、知らぬふりして世に送り出すとは思えません。不正とされることを慣習的な行っていたということは、それは「やってもやらなくても、ほぼ同じ」とメカニックが思うようなことだったのではないでしょうか。形式的なものであったり、実情と乖離している形骸化したものだったのではないでしょうか?

 話は変わりますが、少年サッカーの現場では、「やってもやらなくても同じ」なのに厳然と遂行されねぱならない、とされていることが山ほどあります。

 例えば公式戦試合前の「爪チェック」。審判が食い入るように子どもたちの爪を凝視して「はい、これだめ、切ってきて」とダメ出しをします。どれどれと確認してみると、大抵は「なんでこれでダメなの?」というものがほとんど。そもそも普段の練習試合では爪チェックなど一切しませんし、私の四十数年の少年サッカー指導の経験の中で、爪が原因のケガにはただの一度も遭遇したことがありません。

 「シューズチェック」もお笑いものです。サッカーシューズには雨天用、深い芝用としてスタッド(靴裏についている円錐形の突起)が金属製のものがあります。それは子どもには危険だから使わせない、というのがチェックする理由。しかし、今、金属スタッドのシューズを履いている子どもは、ほぼ皆無です。多分、少年用では販売すらしていないと思います。少なくとも私は、それを使っている子どもを過去、一人も見たことがない。それでも金属スタッドのシューズを履いていないかチェックはするのです。

 もっと笑えるのは、以前、このブログで一度、取り上げたことがありますが、シューズチェックの際、「はい、右足の裏を見せて」といった後、「次は左足の裏」ということ。右足と左足、別々のシューズを履いている子どもがいるとでもいうのでしょうか(笑)。

 先日、ある子どもが審判に「このシューズではダメ」と言われました。理由は「靴底が減りすぎているから」。はぁ、どうして減りすぎているとダメなのですか?と私。「危険だから」と審判。危険?靴底が減っていると生じる危険って何?滑って転ぶから?でもサッカーは靴底の状態に関係なくスライディングして体を投げ出すことありますよ。滑って転んだら危ないと言ったらサッカーできないですよ、そもそも何ミリ以下なら「減っている」と断定されるのですか?結局OKはなりましたが、バカバカしくて話になりません。

 ベンチメンバーにビブスを着せろ、というのも公式戦の縛りの一つ。プレーしているメンバーと控えの区別がつきにくく紛らわしい、というのが理由と思います。確かに一理ありますが、でも、どこのチームだって、練習試合のときにはベンチメンバーにビブスなど着せずとも、まったく問題なくやってます。ベンチメンバーが紛らわしくてオフサイドを見逃してしまった、なとど言う例は聞いたことがない。本当はそんなことしなくても大丈夫とほぼ皆が思っているのに、公式戦になると「ビブス着ないとダメ」となる。

 まぁ挙げればキリがないのですが、形式的、形骸化、という事象がそこかしこにあるわけです。でも危険回避とかフェアとか正確な判定などという概念を厳密に遂行しようとすると「必ずやらねばならない」となってしまう。

 自動車各社の検査不正のニュースを見て、それってもしかしたら少年サッカーの爪チェックとかシュースチェックみたいなものなんじゃないの?と思ったわけです。