強化と指導力

 最近よくJリーグ町田の快進撃の理由を問われます。私は「簡単だよ、お金をかけて強化したからだよ」と答えています。お金を積んでレベルの高い選手を集めれば、強くなるのは当たり前。

 「いや、それだけじゃないところが面白いんだ」という説にも一理はあります。確かに、選手のレベルが低くても采配や戦術の工夫でなんとかなる部分は「ないわけではない」。しかしそれは「あり得る」というだけのことで、成績を見通す中でレベルの高い選手が揃っているという条件を上回るものなどあまり存在しません。

 かつて、あるレストランで私の隣の席で高校サッカー界の大物指導者どうしが話をしていました。「おい~高は強化費2000万出てるんだってよ。そこまでやられると、かなわねぇよな」「うちも最近、減らされててさ、それで勝てって言われても無理だって言ってんだよ」などと、仕事が「高校教師」の人たちがチーム強化にいくらかけられるかの話をずっとしていました。

 その一方の指導者は、今でも各所で「高校サッカーの教育的意義」を繰り返し発信している人物です。口を開けば「教育、教育」と強調してる人物が、実際は「強化にいくらかけらるか」という話に熱中しているわけです。やはり強くなるには「オカネ」ということなのです。

 はっきりしていることは、レベルの高い選手を集めているのに勝てない、というチーム、指導者はどうしようもないボンクラである、ということです。一方、上位チームから関心を持たれないような無名選手をまとめて奮闘し、時に自チームの何倍もの予算を使っているチームに一泡吹かせているようなチーム、指導者はとても有能であると思います。

 能力の高い選手を集めて、自分のやりたいサッカーを実現するこに意欲を持つか、条件が揃っていない中、創意工夫で戦力をあげていく醍醐味に興味を持つか、人それぞれです。私は前者にはまたく興味がありません。好条件が多く揃ったチームを采配すれば勝って当たり前と思っているからです。自分以外の誰がやっても成果が出るような仕事にはまったく意欲は湧きません。

 今、私が関心があるのはJ1に復帰した東京ヴェルディ・城福監督の采配です。若く安い(笑)選手を取りまとめて奮闘している。まさに城福監督の手腕一つで戦っている。人件費予算は町田(約20億)の4分の1で約5億円。しかし現時点での勝ち点は27で、町田39の70%程度の成績を残しいます。ちなみに勝ち点で町田の4分の1に近いのは、最下位の札幌で11です。

 城福監督に率いられている選手たちも、きっと「本当はやりたいサッカー」があるはず。しかしチームの置かれた状況を理解し、城福監督の示す方法論に真面目に従っています。ともすると「美味しい話」ばかりを求めたがる選手を説得し、泥臭く戦わせている城福監督のリーダーシップはたいしたものです。