カウンターアタック

 先日、「カウンターアタック-返し技・反撃の戦略思考」(大修館書店、1500円)を上梓しました。
 執筆にとりかかったきっかけは、南アフリカW杯でベスト16に進出した日本代表の戦術がカウンター狙いであったという点が批判されたことです。振り返ってみれば、アトランタ五輪でブラジルを破る殊勲を挙げたオリンピック代表チームも、守備的だったとひどく批判されたものでした。

 日本のスポーツメディアに登場する人々は、種目に関わらず、日本の選手やチームが守備的シフト、反撃狙いの戦法を採用したときに、一斉に「いかがなものか」と批判します。攻撃的な姿勢を取ることが建設的であり、守備的な姿勢を見せることは進歩の停滞である、という価値観を押し出します。
 私は、こうしたステレオタイプな批判に以前から疑問を感じていました。勝負のプロセスでどのようなスタイルを採用しようとも、最初から「負けたい」と思って勝負に臨む人はいないわけです。勝利という最終目的達成のためには、いろいろな方法論があってしかるべきだと思っていました。カウンターアタックもその一つなのではないかと。  
 同時に、サッカーのみならず、いろいろなスポーツ種目で、攻撃に出た方が逆にピンチを招くケースがが多々ある、ということにも気がつきました。つまり、カウンターアタックという方式が、実は相当、効果的な攻撃方法なのではないか、ということに思いが至ったのです。
 この本では、剣道、空手など武道の達人たちの話も採り挙げられています。武道の世界では「後の先(ごのせん)」といって、相手が先に動くように仕向けて、こちらの狙い通りの形で仕留める、という非常にカウンターアタックに近い戦略概念がありました。これは大変、興味深いことでした。
 サッカーと同じ球技のバスケットボール、ハンドボールなどにおけるカウンターアタックについても採り上げています。将棋、チェスなどのゲームについても触れています。また、戦国時代の武将のカウンター的な戦略についても分析しています。もちろん、サッカーについても、W杯、チャンピオンズリーグの試合などをモデルに、カウンターアタックの実際を掘り下げています。
 自分でもなかなか面白い内容にまとまったと思っています。ぜひ、ご一読ください。