目的と手段のバランスシート...日本サッカーを象徴した試合内容


 なでしこ、残念でしたが、いい試合だったと思います。バーを叩いた2本のシュートがもう少し軌道が違っていたら....とか、宮間さんのFKをハンドで防がれた場面でPKを取ってもらえれば...とか、たら、れば、はあります。しかし、圧倒的な体格差、体力差がある相手に....170cm台、180cm台に150cm台、160cm台が体を張るのですから....できることを精一杯、出したと思います。
 ただ、やはり「ゴールを奪う」という部分に関しての差は歴然でした。フリーにならなければシュートが打てず、少しでも競り合う形になるとパスを回すしかない日本と、競り合った形でもぐいぐいシュートまで持っていくアメリカ。目的と手段のバランスシートが、どれだけ目的に傾いているかの差が示されました。
 今回の五輪でなでしこのパスワークが称賛されました。また、彼女らの活躍で、女子サッカーがより盛り上がることと思います。そして「なでしこらしさ」の醸成として、育成ではパス回しが熱心に指導されることでしょう。それはそれで、いいのですが、一方で、パス回しはあくまでゴールを奪うための手段の一つ、ということを忘れずにおきたいものです。そのバランスシートの差で金メダルを逃したのですから...。
 さて、男子。私は周囲の友人に「日本はパスを回そうとしているうちに韓国の強い当たりにつぶされ、それを一気に持っていかれる形で失点するだろう」と予言していました。残念ながら予言が当たってしまいましたね。

 いくらパスを回しても一向に崩すことのできない攻撃。というか、バスを回す前にほとんどのコンタクトで奪われるか、ミスをする。パスが通るのは誰でも出せる安全なコースのみ。際どい競り合いでは、ほぼ競り負けて痛い、痛いと倒れる。がちっと受け止めて戦えたのは大津だけ。大津一人に韓国は三枚のイエローカード。いかに大津が恐れずに戦ったかということ。
 最初の失点。日本のDF4人に対して韓国の攻撃は一人。日本ならまず絶対、100%。キープして味方の上がりを待ちますね(というか、その前に取れられて終わるけど...笑)。そこを韓国はシュートにまで持っていく。日本ではあり得ないことだから、4人揃ったのDFも面食らう。そうですよね、普段、味方のアタッカーでそんなことするヤツいないんですから、自分の辞書の中にそういう項目が積み上げられてない....。
2失点目、GKからのキックを競り合ってこぼれたボールをあっさり蹴りこまれました。「1本長いボール蹴って走ってくるだけ」なんてバカにしてはいけません。そういう非難が通るのは育成が大事な高校生まで。成人のサッカーでは、そういうオプションもあるのです。現に残り10分で日本はゴール前に上げるだけの攻撃したでしょ。
 試合後、永井が「蹴るだけのサッカーに負けて悔しい」とコメントしていましたが、それは自分のことじゃないの? ここまでの試合、前に漠然と蹴ったボールを追いかけて、相手がバタついているうちにゴール前へ殺到、というサッカーやってたのは自分でしょ。足元のプレーになったら、とたんにミスばかり、だったのは自分でしょ。相手を非難する資格はないですよ。
 以前も書きましたが、足先のこちょこちょしたバスで「上手い」と勘違いしている選手、多いですね。安全が確保されているところに何本、パスを通しても、全体には何の影響もない。相手が寄せてきて際どい間合いになればほとんど後ろに戻してミスを回避する、というなら、何のひらめきも才能も必要ない。「自分はミスしないでつなぎました」というアリバイづくりばかりしても、勝敗には何の貢献もしません。「上手い」とは、試合の流れに影響を及ぼすプレーかできることなのです。
 女子も男子も、結局は「なぜパスを回すのか」という部分、目的と手段の関係がわからなくなっている日本のサッカーの問題点を象徴する結末になったように思います。