なぜ「つなぐ」のか?

 なでしこジャパン、親善試合でアメリカに完敗しました。
 アメリカは勤勉なボール際のプレスで日本のバスを分断、ボールを奪った後はシンプルにタテのスペースに走り込み、アタッカーが積極的にシュートまでのプレーを優先させていました。
 この試合結果を受けて、もしかしたら、一部メディアでは「ボール際のフィジカルの強さで後手を取った」などと批評されるかもしれませんが、私はそうは思いません。ガツンと当たり会う時の強弱で勝負が分かれたのではないと感じました。

 日本の選手はまずファーストタッチのプレーが甘い。ボールをどこにどのように置くか、ということが雑で、簡単に相手に奪われる場所に置いていました。それには「大柄の選手から激しくプレスを受けていたから」という言い訳があるかもしれません。それなら、フリーで前を向いた場面ではどうでしょう。せっかく前を向いて自分のリズムでプレーできる時でも、パスコース、スピードとも不的確で、自ら相手にプレゼント、ということも多くありました。極めつけはスローインを直接、相手に渡して決定的ピンチに持ち込まれた場面でしょう。「こんなにヘタだったのか」とがっかりしました。
 さらに日本は「逃げ」のバスばかり。多分、カットされるリスクのあるコースは避けたという「言い訳」があるのでしょうが、ヨコやウシロへ向けた「安全」と見えるバスが多すぎる。しかも、ヨコやウシロに出した本人が「私はミスしなかったわ」とばかり、後は知らん顔と言う態度でブラブラ歩いている。パスした後、体勢を立て直してリターンを受け、よりよい姿勢で攻撃に向かおうという意欲を全然見せない。
 だから、逃げたパスはほとんど全部、ピンチの種になっていました。ヨコやウシロにつなぐことで、よりアメリカのプレスが勢いづき、結果として非常に悪い形でより悪い場所でボールを奪われる、という場面が非常に多かったのです。GKにバックパスされたボールが「よりよい展開」になった例は、ほぼ一つもありませんでした。
 「簡単にボールを失わないためにポゼツションを大事にする」というお題目のもと、こうしたプレーは男子でもよく見られます。しかし、結果として「より悪い」事態を招くのであれば、そのお題目は看板倒れです。何のためにつなぐのか、それは別の方法で攻めるための建設的な方向転換であるべきで、自らより苦しい状況に追い込むためではないはずです。