すみません、シュートしませんでした

 金曜深夜、必要以上に長引いた所用の帰り。タッチの差で最寄り駅まで行く終電を逃し、途中下車でタクシー待ち。乗り場に並ぶと折り悪く雨が降ってきました。乗り場には屋根がついているのですが、そこで雨をしのげるのは10人程度。あとは屋根のないところで列を作ります。
 列に並んだ半数の人は傘を持っていませんでした。「しとしと」という程度なら良かったのですが、雨は「ビシャビシャ」と降ってきます。そのため、屋根のない部分に並んでいいて傘のない人は、一気にずぶ濡れ。私もその一人。

 すると後方の傘を持つ男性が隣の傘を持たない女性に「どうぞ、乗るまでの間」と一時的に「あいあい傘」を申し出ました。女性も「ありがとうございます」と傘の中に。うん、この男性、いい判断だと関心。他の傘を持つ人も皆、そうやって隣の人を入れてあげればいいのに、と思いましたが、その男性以外、誰もそうせずに、静かに自分だけ傘をさしています。
 いよいよ雨が激しくなります。そこでもう一度前方を見ると、屋根の中の男性陣が必要以上に間隔を開けて立っていることを発見。しかも皆、携帯を体の前につきだして何やらビコビコ。後方の屋根なしの部分でずぶ濡れの人がいるというのに、あまりに無神経。
 「ここはオレの出番だな」と思い。つかつかと屋根の下に進んで「あの~すみません、もう少し間をつめてくださいますか? 屋根のないところで濡れている人がいますので」。すると皆、無表情でしずしずと列を詰めます。その結果、何人かが屋根の中に無事避難。しかし、屋根の中のヤングサラリーマン諸氏、それでもさらに携帯を体の前につきだしてピコピコ。「あの~その携帯を前に差し出している分をもう少し詰めてもらえればもう何人かが屋根の中に入れるんですけど」とまでは、さすがの永井君も言えませんでした。
 それにしても、自分が屋根の中に入ってしまえば、後の人がどうなっているかまったく関心を持たずに携帯の世界でひたすらピコピコという精神、一方、後ろで並んでいる方も、少しのコミュニケーションで濡れることが回避できるのにそれをせずに黙ってじっと濡れ鼠になって耐えている精神、う~んどうなんでしょ~(長嶋茂雄氏風に)。
 10分ほど待っていよいよ自分が乗れる番に。タンシーはポツリ、ポツリと単発でやってくる状態で、列はまだ20人くらい。皆一人ずつの乗車。雨はより激しくなります。そうだ、同じ方向に帰る人を募って「相乗り」してみようか、と思い浮かびました。その方がお互いに料金も折半になるし、待ちの列も早く解消するし。
 しかし、やめました。「列を詰めて」とお願いした時の無表情の反応、また、私意外に誰一人として「詰めて」と言わずにじっと濡れて耐えている様子。何かコミュニケーション遮断のような状況を感じたのです。「~駅方面まで誰が一緒に乗りませんか?」と叫んでも、多分、しらーっとした反応しか返ってこないのではないかと思ったのです。
 でも、タクシーに乗ってから少し後悔。本来、それでも声をかけてみるべきだったな。これではシュートミスを恐れてバスしている選手と同じじゃないか。