何でも禁止

 指導している小学生が使用している小学校のグラウンドでは、私たちグラウンド利用者が使用する用具は、学校の広くて大きな体育倉庫とは別の狭い物置に収納することになっています。サッカー二団体、少年野球一団体が共同で利用しますので、それぞれの用具と石灰、グラウンド整備用具を入れると、物置を開けたとたんに物が崩れ落ちてくるような状態になっています。
 特にグラウンド整備用の道具は大きさがかさばるので、ただでさえ狭い物置にわずか数個しか収納できません。そのわずかな用具で広いグラウンドを整備するには、特に低学年では相当な時間がかかります。そこで、まず、学校で使っている体育倉庫に十分な数が揃っている大きくて使いやすい整備道具を借用させてもらえないものか、また、我々のわずかな数の小型の整備用具を体育倉庫に間借りして置かせてもらえないか、という交渉をしています。

 答えは常にNOです。まずは、学校の授業とグラウンド開放は厳然と区別する、という原則論。また、事故があった場合の責任論も持ち出されます。いわく、以前、体育の時間に整備用具の柄が児童の顔に当たり、歯を折る事故があったとのこと。それは授業中なので教員の責任ということが明確になりますが、仮に休日のグラウンド利用で私たちが体育倉庫に踏み入ることを許した場合、後の授業中に整備道具で事故が起きたとすると、今度は責任の所在をどこに求めていいか不明になる、とのことです。
 禁止、禁止。少しでも危険、苦情が予想されるものはとにかく禁止。臭いものには蓋、と同じ思考回路で、とにかく関わらずにいることですませよう、面倒は御免という姿勢。「ご苦労はわかりました。しかし以前、こういう事故があったので、再発は絶対に避けねばなりません。防止する良い方法はないか、お互い考えて知恵を出しましょう」などという姿勢は微塵もありません。
 「用具が誤った収納をされないための用具を取り付け、常時、指導者の監視の下で出し入れをしましょうか」「誰が使用責任者であったかきちんと署名、捺印するノートをつけて管理しては」などと提案しますが、ダメ、ダメ、ダメ。聞く耳を持ってもらえません。
 そういえば以前、どこの小学校だったか、修学旅行で児童をお風呂に入れないという話しを聞きました。湯冷めして風邪を引かせたときに責任問題になるからだそうです。禁止、制限のオンパレートをして赴任中にはとにかく穏便に何事もなく過ごし、異動してしまえば後は知りません、という姿勢にはこれまで数知れず立ち会ってきましたが、毎度、交渉の度に脱力してしまいます。