アーセナルの失点とレフェリング

 欧州チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦1レグで、イングランドアーセナルポルトガルポルトに1-2で敗れました。ポルトの決勝点は素速くリスタートした間接FKからでしたが、このFKの判定そのものと、FKが蹴られた時のレフェリーの立ち位置は不審を残すものでした。
 その間接FKは、アーセナルDFのソル・キャンベルがGKにバックパスをしたと判定され、ボルトに与えられました。DFが味方GKに向けてキックでパスをした場合、それをGKが手で受けると相手側に間接FKが与えられます。それは、DFとGKが不要なパスを繰り返し、GKが手でボールを保持できる特権を悪用して時間が浪費されることを防止するために設けられたルールです。
 まずキャンベルのキックそのものが「キック」と言えるほど、きちんと「蹴った」ものであるかどうかが微妙でした。そもそもキャンベルの足はボールに触れていないのではないか、という見方もできるほどのプレーでした。もちろん、わずかにかすったほどでもボールが足に触れていれば「キックした」とする杓子定規な判断もあり得るかもしれません。しかし、先ほど触れたように、このルールが制定された「趣旨」あるいはそのルールに盛られている「精神」を考えるなら、仮にキャンベルの足がボールに触れていたとしても、それを意図的な、時間浪費につながる「パス」と見なして罰し、相手にFKを与えるという判断は、私にはいただけません。
 そもそも、法の精神には「疑わしきは罰せず」という基本があります。ましてや、FKが与えられた位置がペナルティエリアの中で、FKからのプレーが得点に直結しかねない場所であることを考えると、キャンベルの足がボールに触れたか触れていないか微妙であり、さらには、ボールに足が触れていたとしてもそれが意図的なパスと見なされるべきかかが微妙なプレー対して、簡単にFKを与えてしまった主審の判断は、いかがなものかと思いました。
 さらに、FKを得て素速いリスタートをするポルトの選手をストップしようとしたキャンベルに対して、主審は進路を妨害する位置に立ってしまい、キャンベルの動きをブロックするような形になってしまいました。もちろん、主審は意図してキャンベルを妨害したのではないはずですが、あの位置でリスタートの後にどのような プレーが生じるかの予測ができていなかったと非難されてもしかたないでしよう。
 ルールはルールとして厳然と適応する、という考えもわかります。しかし、なぜそのルールが設けられているのかという「法の精神」に立ち帰って判断すことも必要だと思います。アンフェア、危険、不平等、反モラル、などの「コモンセンス」を貫くことがフットボールでは最も重要であり、重箱の隅をつつくようにルールを適応させていくことが、もともとのスビリットではなかったはずです。また、もし自分の立ち位置が「アンフェア」であったと判断できるのなら(そう考えてくれないなら話は終わりですが)、そのことに対して何らかの対処をする勇気が、フットボールを裁く主審には必要だったのではないかとも感じました。