悲劇の当事者、経験を歓喜に

 サッカー日本代表が7度目の出場権を勝ち取りました。最終予選序盤に2敗してからの立ち直りは素晴らしかったと思います。しかも最後は、これまで一度も勝利がなかったアウェイのオーストラリア戦を制しての結果でした。見事です。

 森保采配、ズバリでしたね。三苫選手をどう使うか、そのプランがものの見事にピタリとはまりました。このように采配がイメージ通りに実現することの「麻薬的効果」のおかげで、指導者家業がやめられなるのですよね、森保さん(笑)。

 その森保監督、あのドーハの悲劇の当事者でした。しかも、当事者も当事者、一番の当事者といってもいい立ち位置にいました。

f:id:johan14:20220325101330j:plain あの悲劇の失点を生んイラクの右サイドショートコーナーからのクロスに、スライディングで阻止に行ったのがキングカズであったことは誰でも知っているでしょう。そのカズのさらに横でジャンプしてクロスを阻もうとしていたのが、当時、守備的MFだった森保一選手だったのです。写真ではカズの右横に影が映っていますね、その影が森保選手が出している脚の影です。

 自分の体をかすめて飛んでいったボールがあの悲劇の同点ゴールにつながったのですから、いかばかりの心境だったでしょう。その時の記憶はほとんどなく、気が付いたらホテルのベランダで泣いていた、と本人は振り返っています。

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 最後の最後に地獄に突き落とされた経験がある選手が、やがて監督になって、紆余曲折の予選を戦いながら最後の最後で結果をもぎ取る、というのは実に爽快です。選手起用などに身勝手な批判が集まり、想像を絶する心労があったことでしょう。よくぞブレずに戦い抜いたものと思います。

 かつてW杯初出場を勝ち取った岡田武史監督が、やはり予選で大苦戦し、カズ外し等で悪人扱いされている最中、ただ一つの信念だけは一度もブレていなかったと語ってくれました。その信念とは「世界中の誰よりもオレが一番、日本代表のことを考えている」ということだったそうです。

 きっと森保監督もその強い信念に支えられていたはずです。