なかったことにする...?

 サッカーのゲーム形式の練習の際に選手はビブスを着用します。先日、練習の最後にビブスを脱いでコーチに返すのを忘れた子が、帰り道の道端に、それも大人でも拾い上げるのに苦労するような場所に、そのビブスを投げ捨てて帰る、ということがありました。

 その子は帰る途中「あ、いけない、ビブスを脱いでコーチに返すのを忘れた」と気付いたのでしょう。そこですぐに引き返してコーチに返しておけばどうというとはなかったのですが、こともあろうにゴミでも捨てるように(ゴミ捨ても悪しきことですが)、誰も取れない場所(とその子は判断したのでしょう)にビブスを投げ捨てて帰ってしまったのです。

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 コーチのところまで引き返すといっても、1~2分しか要しない距離です。どんなに帰り道を急いでいたとしても、時間、距離とも大したロスにはなりません。そのわずかな時間でさえ無駄にできない急ぎの要件があったとしたなら、そのまま家に持ち帰って次回の練習の時に「この前、帰りに渡すの忘れてしまいました」と言ってコーチに差し出してくれればいいだけのことです。

 その子は、このまま誰も気づかないままビブスが一枚なくなってしまえばいい、あとは知らぬふりをしていよう、と思ったのでしょうか。まるで証拠隠滅でも図るかのように、誰も気が付かないような場所にビブスを投げ捨てて帰るという心理が小学生に生じることに、コーチ一同、とても困惑しました。

 しかし考えてみれば、自分の都合の悪いこと、話しづらいことをに対して、きちんと言葉や態度で区切りをつけることができず、あやふや、あいまいなま、いつの間にか「なかったこと」にしようとする行為は、中学生、高校生、大学生、時には分別のあるはずの成人でもあります。

 サッカークラブでよくあるのは、退会に関しての「うやむや」です。退会します、と一言、申告してくれればいいのですが、それをせずに、活動に無断で参加しないことで「辞めたこと」にしようとする。「いつの間にか消え去っている」ような退き方をして、未納の会費も納めないまま、何となく関係を断とうとする。そんな事例が毎年いくつかあります。

 ビブスを見えない場所に投げ捨てて「使ってなかったこと」にしようとした小学生は、長じてそういう大人になってしまうのでしょうか。先行きが心配です。