「今」は「明日」に続いているのに...

 今しか見ない。次の試合に勝たせることしか考えていない。少年指導に蔓延している悪しき実態。
 1・2年生10分ハーフ、3・4年生15分ハーフ、5・6年生20分ハーフ。大人の45分ハーフからしたら「立ち上がり」に含まれる短い時間。あっという間。だからガンガン押し込むプレーを徹底させれば勝率はいい。少年サッカーの審判なんかお父さんたちのお手伝いだから、後ろからのチャージなんて滅多にファウルに取ってもらえない。ビシビシ当たったもん勝ち(笑)。ビシビシ体当たりしてボールを奪って、ゴール前に入れて殺到して押し込めばいい。
 小学生時代はそれで結果がでる。指導者はその子たちの「その後」なんか全然考えてない。6年間染みこんだガンガンサッカー(笑)を中学生になってもやってしまい、それが全然修正できない「石頭」になってしまっていることが想像できていない。
 ジュニアユース(中学生)の部でいろいろな少年団から選手を受け入れて毎年、感じることは、その子のプレー見ると、少年時代の6年間、何をやらされてきたかが一目瞭然でわかるということ。多いですよ、決めれたことをひたすら強く、速くやることにかけては結構すごいのだけれど、状況に応じて細かな修正をすることがものすごく苦手、という子たち。つまり「自分で考える」という習慣がまったくといっていいほどできていない子たち。
 言うまでもなく、子ども自身に責任はなく、全ては彼らと接した大人たちの責任。「将来、どうなってほしいか」というビジョンを持つことなく、ひたすら次の試合の結果ばかりに拘泥してきた結果。勝って成績が良ければ、子どもがどんな感じ方、どんな考え方をするようになったかは、どうでもいい。
 目前の結果しか考えない、という育成が、結果として、冷静に自分の頭で考え、判断し、決断できる力を伸ばせず、指示を待ち、自分で判断せず、人に追随するだけの人間をつくってしまう。
 さて、選挙も同じですね。憲法9条を変えて軍事化を推進しよう、盗聴を許して反体制的な動きを縛ろう、「秘密保護』と称して自分たちに都合が悪い情報は隠蔽しよう、原発は動かそう、沖縄の民意は無視しよう、通したい法案は強硬採決してしまえばいい、自分たちの悪事に対する答弁は「記憶にない」で逃げればいい...そんなことを平気で推進している人たちに、子どもたちの将来を託していいんですかね...と私は思うのですが、結果を見ると「いいんです」と思っている人がかなり多いみたいです。驚きました。いいんですか...。
 「そういうこともあるけど、とりあえず株価も上がって景気は少し良くなったようだし、就職率も少し改善したようだし...」という声が聞こえてきそうです。あ~あ、そうなんだよな。次の試合の結果しか考えない少年サッカーの指導と同じなんだよな。すぐそこ、しか見ない。後でどうなるか、は考えない。 
 考えてみれば、サッカーやってても、常にキラーバス狙っている、スキさえあればシュートする、なんて選手、ほとんどいないもんねプロもアマも。取りあえず誰かにパスを預けて、自分はミスしなかった、と。取りあえずバスつながってるからいいじゃん、と。思い切ったプレーは誰かがやってくれるでしょう、と。だから98年W杯初出場以来、何一つとして改善していない。同じことを繰り返している。
 まあ、選挙でああなんだから、社会はいつまでたっても変わらず、人の意識も変わらず、現状容認が続くんでしょうね。「今の暮らし、まぁわるくないじゃん」みたいな意識が蔓延して、サッカーも「ニッポン結構いいプレーしてるよね」ってな感覚で...。まぁそれが大多数の皆さんのお気持ちならしょうがないでしょうな。