いいよ、戦って奪い返して来いよ(怒)

 北方領土を戦争して取り返せと言った議員。いいじゃないですか。行かせてあげましょうよ。誰も止めはしませんから。皆で揃って日の丸振ってバンザイして送り出してあげますよ。行ってきなさいよ。鉄砲撃ちまくって、突撃して、戦ってきてくださいな。仰せの通り勇敢に戦って見事に取り返してきたら、国民栄誉賞でも何で進呈して褒めてあげましょうよ。

 ただしその前に、戦争するってどんなことか、戦場ってどんなところか、例えばシリア紛争の最前線にでも行って、人と人が殺し合う現場ってどんなものなのかを、北方四島の時のように公費じゃなくて、今度は自費で「研修」してきなさいよ。

 昨日まで隣で談笑していた友の手脚がバラバラに吹き飛ぶとか、内蔵が飛び出た遺体の影に隠れて応戦しなければならないとか、乳飲み子をかかえた母親に容赦なく銃弾が浴びせられるとか、そんなことが日常茶飯に起きている現実をじっくり体験してきなさいよ。

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72年ベトナム戦争。ナパーム弾で衣服を焼かれた少女。


 「戦争して取り返す」と勇ましいこと言うのだったら、自分のアタマが一瞬で吹き飛ぶかもしれないという現実の中に躊躇なく自ら飛び込んでいく覚悟があるのでしょうね。まさか「自分は決めるだけ、行くの別の人」などと、コントのオチみたいなこと考えているわけではないでしょうね。「戦え、ただしオレは“行け”と命令するだけだ、行くのはお前たちだ」と言ったって、ぜんぜん説得力ないでしょ。

 ところで、アメリカ軍の志願兵が減って、補填のために街角で兵士をスカウトする活動があるそうです。大型トラックの中に疑似戦闘のシミュレーションゲームを搭載し「ねぇキミ、ちょっとやってみない」と誘うのだとか。ゲームだから、自分は絶対に傷つかず、死ぬこともない。ガンガン相手を倒して得点を挙げて気分が良くなってきたところで「キミ、戦いのセンスあるね。そのセンス、我が軍に入って国のために使ってみない」と誘うと、大抵はOKするのだとか。

 そうして入隊した若者たちが、訓練を受けて実際の戦場に送られ、ガンガン弾丸が飛び交い、目前で同胞が血を流して死んでいく現実に向き合わされると、足がすくみ、腰が抜け、時には恐怖で失禁してしまい、まったく使い物にならなくなるのだとか。「今、すぐに自分のカラダが吹き飛ぶかもしれない」という現実に直面すれば、さもありなんでしょう。

 勇ましいマルヤマくんには、そういう「現実」をじっくり体験研修してもらってから「出征」してもらおうじゃないですか。

 マルヤマ君に確認しておきたいのは、戦うだけではなく、戦って奪い返した後の国際関係をどのように維持するのか、きちんとした計画と見通しがあるのでしょうね...ということ。国と国の関係はPCのゲームではないので、奪いかえした時点でゲームオーバー、あとは気が向いたときにもう一度最初からやればいい、という訳にはいかないのですから。

 戦闘で死傷した人たちとその関係者の怨念は残り続け、焦土となった地域の復興、発展には膨大なエネルギーの投入が必要になります。中国や韓国に対して、70数年前の謝罪とか保証とかが未だにくすぶり続けているという悪しき前例があるのですから、それに学び、そうならない賢いアイディアを持っているはずですよね、トーダイ出なら。