やっばりね

 先日、旧知の横浜サッカー協会幹部と、こんな話をしました。

 永井「ある試合会場でね、ある人にとても親切にされたんだ。その人は責任者として要項に名前が載っている人ではないし、名乗ることもがなかったので最後まで誰かはわからなかったんだけどね、とにかく責任者の人以上に熱心に、何から何までこと細かに気を遣っていただいた。物腰はやわらかいし、言葉も丁寧で紳士的だし、何より発想が柔軟でいわゆる“杓子定規”じゃない。子どもが安全にフェアにプレーできれば、いちいちうるさいことは言わないという度量の大きさがあった。今時、こんな器の大きなひとがいるのだなぁと感激したのだよ」

 某幹部「あ、知ってるよその彼。そういえばね、協会にもその人から報告が来ていますよ。永井さんのところがとても模範的なチームだったって。幹部連中がその報告読んでね、またきたかと。その人はよく人を褒める人でね。協会の中でも彼はすばらしい人物ということで有名なんだよ。だから永井さんのことが書いてあったとき、ははぁやっばりね、いつものとおりさすがに目の付け所が違うねと、また彼の評価があがったところだったんだよ」

 永井「なーんだ。そうだったの。オレが褒められたことならすぐに知らせてよ。子どもたちに自慢できるじゃん」

 某幹部「なにせよく他人を褒める人なんでね。それに、まぁ永井さんには悪いんだけど、それほど大げさに褒める称えることでもないと思ったのでスルーした(笑)」

 永井「えーっ、そうなの(笑)。でもまぁ、他人のアラを探して揚げ足を取る人が多い昨今、良いところを見つけて褒めることは大切だよね。そういう人が増えるといいね」

 某幹部「そうだね。最近は規則を守らせることに命がけ(笑)みたいな人が多くなって、ダメダメダメばかりで息苦しくてサッカーも応援もぜんぜん楽しめないっていう苦情も随分くるんですよ」

 永井「ふーん、そうなんだ。まるで泥棒でも郵便屋さんでも、誰でものべつまくなしなワンワン吠える頭の悪~い番犬みたいな奴がいるんだね(笑)。安全、健康、フェア、マナー維持などに支障があることはきっちりしたほうがいいけど、そうでない部分は柔軟にやってもいいし、臨機応変な視点はサッカー的にも必要だよね。決められたことを厳守すること以外、一切考える余地はないなんて、思考停止を進めるだけで「教わったことしかできません」っていうアホな選手をつくる悪しき土壌になる。

 某幹部「おっしゃるとおり。それ、日本のサッカーが強くならない一番の原因だよね。だからこそ彼も、そういう臨機応変さを発揮していた永井さんを褒め称える報告をしたんだと思うよ」

 永井「そうなら嬉しいね。いまさらながら、僕を褒めてくれた人の、人間としての器の大きさに感服します。彼に習っている子どもたちはきっと、決められたことしかできないマシンみたいな子にはならないんだろうね。