我が子さえよければ...

 先日、港北FC中学生の部のセレクションを行いました。おかげさまで定員を上回る応募があり、不本意ながら合格、不合格の選別をさせていただきました。
 今回からセレクション申込用紙に「合格した後に入部辞退の可能性があるか否か」を記入してもらうことにしました。
 我々指導者にとって一番辛いのが、「港北FCに入れて下さい」と受験してきた選手に対して「君は不合格です」と冷たい通告をつきつけることです。しかし一方で、港北FCへの入部をさほど熱望してはおらず、高校受験と同様に「滑り止め」感覚で受験する選手、あるいは「レベルはどんなものか」と物見遊山、力試しで受験するような選手もいます。
 そんな中、定員があるので私たちは何名もの選手に「不合格」を突きつけなければなりません。苦渋の選択をする際に、同等の力量なら、あるいは多少、力量に見劣りがしても「合格したら辞退せず絶対に港北FCでがんばります」という選手を優先して受け入れてあげよう、という判断をして「辞退の可能性」を問う欄を設けたわけです。
 「辞退の可能性あり」と記していたのは4名だけでした。うち3名に、辞退されるのを覚悟で合格通知を出しましたが、2名は辞退せずに入部しいくれました。これは嬉しい誤算でした。
 参ったのは「辞退しません」と記していたので合格通知を出ししたのに、実際は入部しない選手が2名いたことです。
 この2名が正直に「辞退の可能性あり」としておいてくれれば、断腸の思いで不合格にしたうちの2名を救ってあげることができたのです。
 「辞退の可能性なし」と記しておいて、そしらぬ顔をして合格後に辞退した2組の親子は、自分たちがウソをついたことで不合格になった2組の親子のことをどう思っているのでしょうか?
 申し込み用紙にウソを記入したことで法的瑕疵を問われることはないでしょう(厳密に言えば契約不履行みたいなことがあるのかな...)。彼らは近隣クラブの顔見知りですが、卒業してしまえば疎遠になりますから、顔を合わせて気まずい思いをすることもないでしょう。そもそも「落ちた子のことなど知ったことか」と自分の子さえよければいい、という考えなのでしょう。
 申込用紙の欄に記入する時から入部辞退までの一連の流れの中で、きっと選手である子ども自身の胸の内に一抹の良心の呵責が生じたはずです。本当は辞退するのに、辞退しませんって書いていいのかな...という。その純な気持ちに「いいんだ。辞退しませんって書いとけば。入るかは入らないかはこっちの自由なんだ」とけしかけた親がいるのでしょう。
 ウソをつくな、正直であれ、人の迷惑になるようなことはするな、自己中心はよくない...とさんざん叱られ、しつけられてきたその親本人から「そんな約束、正直に守る必要はない」「人に迷惑がかかっても、罪に問われなければ自分の好きにしていんだ」ということを示される。その子の「モラル」はこの先、どのように形成されていくのでしょう。
 そう思うと、この2組の親子には辞退していただいて、かえってよかっとと思うわけです。