お受験ママ聞きましたか!?ムヒカさんのメッセージ

 私が尊敬する人物の一人、ムヒカ・元ウルグァイ大統領が来日し、数々の素晴らしいメッセージを残してくれました。
 「あなたが何かモノを手に入れたとき、それは、それを手に入れるために失った時間の代償なのです」
 より多くの物質や金銭を多く手にしようとして、私たちはどれだけ貴重な人生の時間を浪費していることか....ムヒカさんはそのことを嘆きます。人生そのものを売って豊かなモノを手入れて何になるのだ、それは生きるために本当に必要なことのなのか、と。際限ない欲を満たすために人生の大半の時間を浪費して、年を取るまで借金(ローン)に追われて、それでどうして幸せなのですか、と。
 生まれてたった8年か9年で受験地獄に組み込まれ、より良い中学、より良い高校、より良い大学、より良い企業と進むことが、よりよい土地に家を持ち、より良いモノを買い、より良いものを食べ、より安心な老後を送ることだ、それこそが「幸せ」なのだ、という神話を信じて我が子を受験に駆り立てる親たちがいます。
 幼い我が子の「老後」まで考えて、楽しく快活に動き、泣き、笑い、作り、壊し、群れ、ぶつかり、考え、悩み、感じ、想い、豊かに創造を膨らませるべき時間を強制的に略奪し、机にかじりつかせて受験術の反復を強要するのです。子供たちは本来あるはずの「子供らしく生きる時間」を奪われます。
 こうして老後まで設計するために早々と略奪されてしまった「子供らしく生きる時間」は、その後、計画通り大企業に入って安心の老後を獲得したとしても、二度と取り戻せません。本来、子供時代に経験すべき「子供らしい時間」を全て奪われた人間は、どんな感性を持つ大人になるのでしょうか。
 人の痛み、苦しみがわかる人になれるのでしょうか? 仲間を思いやれる人になれるのでしょうか? 自分の時間を投げ打ってでも人や社会の役に立つことのできる人になれるのでしょうか? 物質的、金銭的に豊かなら、そういうことはどうでもいいのでしょうか?
 受験だけでなく、私たちの多くは「将来」のために「今」を犠牲にします。そして、その「将来」に期待しているのは物質的、金銭的豊かさであることがほとんどです。一度きりの限られた人生の中で「生きる時間」を削って物質欲を満たす。それが本当の人生の「幸せ」なのか、私たちは考えねばなりません。特に将来のある子供たちが「失う時間」の意味はとても大きいと想います。