今や“青田買い”ではなく“苗木狩り”

 夏休み中に小学6生の部員から、あるチームの中学生の部のセレクションを受験したいので、願書に代表者のサインがほしいという申し出を数件、受けました。締め切りが8月中なのだとか!!!
 えええっ、受験って....まだ夏でしょ!!!。6年生になって一学期が終わったばかりでしょ。それなのに、もう来年の4月のチームづくりのセレクション!!! 「青田刈り」なんて言葉がありますけど、青田どころか苗木のうちにツバをつけておこうという魂胆にはただあきれるばかりです。
 なぜ、そんなに急いで「苗木刈り」をするのでしょう?
 それは、できるけ早いうちに優秀な素材を自チームに囲い込んでしまい、他チームに獲得されることを阻むためです。つまり、そのチームが勝利至上主義にどっぷりと浸かっていることを恥ずかしげもなく公開しているようなもので、個々の育成になどという概念は皆無であることを自ら認めているようにものです。それほどまで躍起になって早々に囲い込んで人材をかき集めねばならぬほど、自分たちの「育成」という部分の指導哲学に自信と誇りがないのでしょう。
 そんな勝利至上主義のチームに入っても、数十名の同期生のうち、希望のボジションでレギュラーになり活躍できるのは1~2名。あとは、もともとFWだったもののサイドバックにコンバート、などの形で試合に出られる子が数名、その他レギュラークラスと同数以上いる残りのメンバーは3年間、ただただ会費を支払う「金ヅル」としてクラブの資金源になるだけです。
 何でも、そういうクラブは会費以外にも揃いのジャージ、バッグ、ベンチコートなど一式を購入すると軽く10万円を越えるのだとか。早々にセレクションをして絶対に試合に出せない人数まで保有するのは、そこからの資金確保という意味もあるのではと勘ぐりたくなります。
 まぁ子ども自身も親も、ベスト16のチームよりはベスト8,ベスト8よりはべスト4のチームに入りたい、という気持ちもあるでしょう。しかし、その1試合分、2試合分の余計な勝利が、その子の3年間にとってどんな意味があるのか、よく考えた方がいいでしょう。
 高校、大学、社会人と成長する中で、中学時代にベスト16だったのか、ベスト8だったのか、ベスト4だったのかは、まったく関係なくなると断言します。皆さん、香川選手や岡崎選手が中学時代に県でベストいくつまで進んだかご存じですか(笑)。その1試合分、2試合分の、ほとんど意味のない優越感を得るために、伸び盛りの日々をムダにすることにならないのか、よく考えた方がいいでしょう。
 私は、そもそも夏の時点で申込み締め切りをするような考え方をしている時点で、少年の育成団体としては失格であると思っています。