強い守備力は強い攻撃力があってこそ育つ

 先週末、プレミアリーグチェルシーvsレスターの解説をさせていただきました。今年昇格したばかりのレスターは、優勝大本命チームの敵地に乗り込んでも果敢に攻めて大健闘。負けはしましたが、レスターの評価は高まったと思います。
 それにしてもチェルシー。今さらながら個々の選手の能力の高さは素晴らしい。特にこの試合で目を引いたのは守備における1対1の強さ。テリー、ケイヒルイバノビッチらDF陣は、スペースを活用された相手の攻撃に対処する際、ここでかわされたら終わり....という場面で絶対に突破を許していませんでした。
 ホーム緒戦で昇格組相手に圧勝を義務づけられているチェルシーは、前に前にと攻めねばなりません。そこでどうしても後ろにスペースをつくってしまい、レスターのカウンターを受けることになります。ところが、相手のカウンターによるピンチになっても、結局、駆けつけた選手の誰かが1対1でストップしてしまうか、あるいは相手に良い体制を作らせずに時間を浪費させてしまうので、大きな ピンチになる前に事なきを得ずにすむのです。
 スリーラインだのブロックだの組織をうんぬん言う前に、1人の選手の守備能力が高いことがとても大事だということを改めて強く実感しました。レスターは組織として非情によく訓練された好チームですが、やはり局面の1対1では、特に守備面で、チェルシーに相当、大きなアドバンテージがあることを実感しました。
 強い1対1の守備能力は、強い1対1の攻撃力を止めようとする努力があって初めて醸成されます。日常的にハイレベルな1対1の攻めがあることが大前提なのです。....ということは、組織、組織、と強調されてポゼッションとバスワークにこだわり続ける日本のサッカー環境では、いつまでたっても攻守両面での強い1対1は醸成されるわけありせんね。1対1の突破の攻防なんて、日本では滅多に見ることがないですからね。 
 W杯コロンビア戦、ハメス・メドリゲスにあざ笑われるように翻弄された失点シーンを振り返れば、今のままでは W杯ベスト8のレベルに対しては2人、3人がかりでも、いいようにおちょくられてしまう個々の守備レベルだということが認識できます。あの守備力でなんとかなる攻撃力しかないからこそ、あの守備力しか育たないなのだ、ということです。