学力・教師、競技成績・コーチ

 静岡の6年生の国語の成績が最下位だったとか。だから県知事は下位校の校長名を公表するというバカバカしい決定をしました。批判されると、一転、今度は上位校の校長名を公表したとのこと。こうした行為に、同県キョーイクイインカイは肯定的な姿勢だとか。
 まぁなんとも惨めで貧困な精神の話じゃないですか。校長の尻をひっぱたけば子供の学力が上がるとか下がるとか。
 学力、というかこの場合はほとんど「記憶力」ですから、時間を掛けて徹底して鍛えれば成績はあがるでしょうよ。これ、子供のスポーツの成績と同じ。有無を言わせず教え込んだパターンを徹底して仕込めば、この時期なら手っ取り早く勝ちますよ。
 しかし、そうして「叩き込んだ」知識が本物の国語力として養われますか? 自分の考えを的確にまとめて、正しい言葉遣いで文章にして理路整然と他人に伝える力がつきますか?
 かくして、「負けたくない」校長はかけ算の九九のように、呪文のように、漢字とか熟語とか覚えさせるんでしょうね。サッカーで「ここに走ってここに蹴れ」とコーチが強制的に決めるように。そうして「乾坤一擲」「臥薪嘗胆」「隔靴掻痒」などとスラスラ書けるるけど、それをいつ、どのような文脈で使うかは知らない...みたいな子供が量産されるのでしょうね。
 そもそも、勉強もスポーツと同じで「もともと優れている」子が多いか、少ないかが、何よりも大きな要素ですよ。「できる」子が多く集まっていれば、先生やコーチがポンクラでもいい成績が出るわけです。逆に「もともと歩みが遅い」子が多ければ、どんなに優秀な先生やコーチが指導しても結果はなかなか出ない。
 だから、進学率を上げたい学校は優秀な子ばかり入学させるんじゃないですか!!本当に優れた教員と優れた教育メソッドを持っているなら、ダメな子ばかりを集めて驚くほど優秀に変貌させて卒業させるはずでしょ。でも実際はそうではない。最初から優秀な子だけを選りすぐって教えるわけです。少年サッカーのチームだって同じ。運動神経のいい子ばかりを揃えて、そうでない子を自然に辞めさせるようにするから強くなる。
 サッカーで強いチームは練習回数も多い。技術と体力が上達するチャンス自体が多いわけです。しかも、勝ちにこだわる親は、その練習の合間を縫って別のスクールに通わせたりもする。そうして徹底的にカネと時間をかければ、足腰も心肺持久力も強くなりますよ。ガツンと当たってポカンと蹴れば、週に1~2回の練習しかしていない子をなぎ倒すことはできる。
 勉強だって同じでしょう。ナントカスクールの「強化クラス」みたいなところに通わせて、鉢巻きしめて呪文のように決まり文句を反復すれば、絶対的な知識量は増える。だから間違いなく「テスト」では圧倒的に有利。毎日、野山で遊んでいる子が、かなうわけがない。
 例えば、この二つのどちらの子が多いかで、クラスの成績なんて簡単に左右されちゃうわけです。センセイがいくら授業を工夫したって、焼け石に水なわけです。校長の尻をひっぱたいても、学校の2時間、3時間でどうにかなるものじゃない。
 それより、一番成績の良い学校の校長を一番成績の悪い学校に配置転換してみてはどうですか。大して成績はかわらないですよきっと。サッカーだって同じ。好成績のチームのコーチが優秀だというなら、「歩みの遅い」子が多いチームの指導をさせてみればいい。そこで「さすがだ」と思わせる指導ができるかどうかは、疑わしいものです。
 私が三十数年の経験から見ると、「良い指導をしているな」「子供のことをよく考えているな」と思うのは、むしろ強くないチームの指導者に多くいます。学校の先生も同じではないでしょうか。優秀な子、打てば響く子は、誰が教えても順調に伸びるのです。優秀な指導力必用なのは、むしろ、そうでない子の方なのです。テストの点では目立つ結果は出ていないけれど、子供の個性と成長に寄り添って素晴らしい指導をしている、本当に優秀な先生はそういう人なのです。