フェアとは何か?

 パラリンピック陸上競技200mで2位になったピストリウス選手が、1位のオリベイラ選手の義足が長すぎるのではないかと抗議しているそうです。
 ピストリウス選手は義足のバラリンピック選手ながら、普通の五輪にも参加しました。彼の五輪参加については議論が百出しました。カーボン制の義足の反発力が健常者の脚よりも強い出力を発揮するのではないかと疑問視されたからです。

 近年では障害を持つ方々の装具も日進月歩で、日常生活を助けるところにとどまらず、競技者としても好記録を出す一助になっているようです。ピストリウス選手は両脚を失う不幸に見舞われましたが、やがて高性能の義足に出会い、健常者と対等あるいはそれ以上の走力を得ることになったのです。
 スポーツにおいて、生来の肉体能力と正統なトレーニングによって得られた体力以外の助力を用いることはアンフェアである、という点について異論を挟む人は少ないでしょう。ドーピングもその精神の延長上で禁止されています。しかし、障害者の装具についてどう考えたらいいのか....ということは新たな課題です。
 そのピストリウス選手が、敗れた相手に対して「あれはフェアな義足ではない」とクレームをつけていることは非常に興味深いと思います。「義足が長すぎる」と指摘しているようです。装具の素材、反発力と並んで、物理原則からして長さが出力に重要な意味を持つことは理解でます。ただし、異なる体格、体型、異なる障害の具合の選手が誰も異論を挟まない「フェアな義足の長さ」とはどのくらいなのか、非常に難しい問題です。さまざまなハンティのある方々が一様に「フェアな条件」で横並びにスタートすることは、なかなか難しいのではないでしょうか。
 そもそもフェアとアンフェアの境界線も非常に難しい。テーピングやサポーターは体を補強するものとしてアンフェアではないのか....。食事以外にサプリメントを摂ることは、精神としてはドービングと同じなのではないか...。先進国の有名アスリートが最新機能のシューズを履いているのに対して、途上国のアスリートが使い古しのシューズを履く...これはフェアなのか....などなど。
 残念なことですが、パラリンピックにもドービングがあり、また、障害の規定違反があります。禁止薬物を使用したり、障害の程度を偽ったりして勝利しようとする人がいるのです。今や、パラリンピック選手にも個人スポンサーのつく時代です。勝ち負け、順位が生活を左右するとなれば、あらゆる手を尽くして勝つ....という状況は避けられません。